3月はじめ、久しぶりにパナマ国外に出てメキシコに行ってきた。 メキシコ太平洋に浮かぶソコロ諸島へのダイブクルーズに招待をされたため、10日間の視察旅行だ。 目的は、ジャイアント・マンタとザトウクジラ! マンタって意外と人懐こいのね。(今回掲載の写真は全てGoProビデオから抽出しています) パナマを出発した後トランジットの関係でメキシコシティに一泊して、翌昼バハカリフォルニア半島の南端サン・ホセ・デル・カボへ。 「サン・ホセ・デル・カボ」少なくとも今回は道路脇で馬の死骸をむさぼる野良犬とかは見なかった。 メキシコは15年程前にバックパックを担いで散々さ迷い歩いた国で、サン・ホセ・デル・カボもまたほろ苦い思い出がある場所なのだが、街や道は、当時よりもかなりリゾート開発が進んでいるようで全て小奇麗に変化していた。 空港から車で15分ほど移動した港に今回の船「Valentina号」が係留されており、着くと早速メキシコ人ガイドのロレンソが日本語で案内してくれた。Valentina号は日本の旅行社が出資している船で、クルーはみな片言の日本語を使うらしく、特にロレンソはペラペラの日本語で出迎えてくれ素直に驚いた。 もう一人、日本人ガイドも乗船し、合計3人のガイドと15人のゲスト、そして8人のクルーでの航海だった。 上陸ポイントまるでなし。サンベネディクト島 ソコロ諸島はサン・ホセ・デル・カボより航行すること24,5時間でたどり着く南海の孤島、軍事基地のあるソコロ島と、サンベネディクト島、そしてロカ・パルティーダという岩礁で形成されているダイビングポイントだ。 この時期はザトウクジラが子育てにやって来る季節らしく、島にたどり着くと沖合すぐ近くにクジラの潮吹きがあちこちで見かけられる。そしてハンマーヘッドシャークやガラパゴスシャーク、シルキーシャークなどの大物、さらにジャイアント・マンタが間近で見られることで有名らしい。 出港してからまる丸一日は海の上を移動するだけなので、ゲストやクルーたちとおしゃべりタイム。 ゲストの内訳は日本人ダイバーが僕を含め7名、スペイン人ダイバーが4名、他のヨーロピアンダイバーが4名で、ビール片手におしゃべりしたところ、どうもことのほかスペイン人ダイバー達と話が合った。スペイン人と話したことなど今まであまりなかったのに、ラテン生活が長いせいだろうか。 彼らにしてみれば片言のスペイン語を話しパナマに住んでいるドレッドヘアの日本人ダイバーというのがツボったらしい。 翌日から5名3チームに分かれてダイビングが始まるのだが、僕は必然的にスペイン人チームに編入されていた。 今回はソコロ島で軍事演習があるとのことでソコロ島でのダイビングは出来ず、サンベネディクト島の2ポイントとロカパルティーダの1ポイントを6日間かけて潜り倒すようだ。 まだ日の登りきらない朝6時に起き、軽い朝食を済ませ、ウェットスーツを着込んで海に出る。 一本目のダイブで待っていたものは 惚れ惚れするような真っ黒ボディ ブラック・マンタ 初めて見たが、こいつは相当格好いい。 遺伝子的には他のマンタと同じなようで、白黒パターンは個体差とのことだが、なにせ馬鹿デカイのに動きが優雅でそして真っ黒なのだ。こいつは惚れる。なんだこの動物。この格好良さは魚にしちゃ反則だ。 ウェットスーツを着ていても鳥肌が立つのが分かった。 さらにこの日、残りのダイブでは水に入る度にクジラの声が聞こえ続けた。 コレも初めての体験。 ガラパゴスではクジラの潮吹きは見れても水の中で声を聞く機会なんてなかった。 なんなんだこの海は。すごい! クジラが発する色んなタイプの音で海域が満たされている様だった。 高音だけでなく、ポワンポワンというソナーのような音や、歌の様に長く続く音が水の中で鼓膜を振動させるのはとても不思議な体験だ。音を内包する水に体が包まれて、体で音の振動を感じることができるのだ。 ハンパない。 イルカもいるよ 他にもイルカやらサメやらも普通に見れるのだが、気を取られるのはやはりクジラの歌。 前日の解説でガイドがイルカと人魚のジョークを披露していたが、クジラの歌を聞いていると人魚伝説にも思いが馳せる。 4本目のダイブではそのガイドがロストして3人だけで潜るはめになり、めぼしい獲物は何も見れなかったがクジラのコンサートがずーっと聞こえていて、海底でボーっと聞き惚れていた。 初日から感動に包まれたダイブだった。 この夜はビールにワインでラテンチーム大いに盛り上がった。 バレンティナ号はビール無料、ワインも1日一杯無料なのがとてもいい。 サメもいるよ 二日目は同じサンベネディクト島でも他のポイントでのダイブ。ここではなんといってもマンタがすごかった。 4m〜5mくらいのマンタが音もなくスッと現れるのだ。 現れたと思ったらその後は逃げる様子もなく優雅に旋回し、ダイバーの出す泡にわざと体をくぐらせるような泳ぎもする。 2,3匹同時に現れることが多く、観察しているとマンタ同士でじゃれあっているようにしか見れないような泳ぎをしていた。 とても優雅に羽ばたきながら、糸巻き部分を伸ばしたり巻いたりして他のマンタの尻尾をつかもうとしていたり、大型動物のそんな姿はまるでちょっとした「神々の遊び」を見ているようだった。 ダイブマスターを取得する際に、先生だった人から「海洋生物には絶対に触らないこと」としつこく躾られているので、いくら手の届く場所にマンタが来てもこちらから触ることはしない。ただ、この「ボイラー」ポイントでは、マンタに追いかけられたり、後ろから急に現れたマンタを避けて腰をグキッといわせたり、何かと衝撃的な体験ができた。 あとで知ったのだが、奇しくもこの日同じポイントに来ていた他の船「Solmar V」に僕の先生がガイドとして乗船していたらしい。羨ましいぜ、パブロ。 別れた岩という意味のロカ・パルティーダ ダイビング3日目、4日目はロカ・パルティーダ岩礁へ。 このポイントは周囲に全く島影がないのに、突如80mの海底から岩が突き上げるように海面に顔を出している。